
公開日 2025年06月05日(木)
更新日 2025年06月08日(日)
【くちぶえエッセイ】自然に触れるたび、
ひとつ大きくなる。
アウトドアの季節がやってきた。
春の風が心地よくなった週末、
ずっと行きたかった人気のキャンプ場の予約が、
ようやく取れました。
聞いていたとおり、
サイトの区画も景色も完璧。
娘と「やっと来られたね」と顔を見合わせて、
なんだか旅の始まりみたいな高揚感。
テントを張る前に、まずは自然を満喫。
水の冷たさに思わず声をあげながら、
河原で石を拾ったり、石を投げたり。
娘はどの石がよく跳ねるか、
真剣な顔で研究中。
すぐ調子に乗って、
ずぶ濡れになるところも、
毎度のこと。
けれど、こんなふうに
無邪気に自然と遊べる時間って、
いちばん贅沢かもしれません。
午後はカヌーにも乗って、川を探検。
乗る前は不安そうだった娘も、
キラキラと輝く水面に浮かぶ気持ちよさに、
笑顔が止まりません。
自然って、大きくて怖い。
でも、だからこそ信じる力や
挑戦する心を教えてくれる気がします。
設営も、もうだいぶ慣れてきた。
娘はテントのペグを打つ担当で、
打ち方も板についてきています。
焚き火の準備も、
薪を集めて組むところまで
自分でやりたがる。
かつて虫を怖がって逃げ回っていた子が、
今では火を見つめて静かにほほ笑んでいる。
まぶしい成長です。
タープの設営は、
毎回ちょっとした戦い。
今回は風が強くて、
布がバサッと舞い上がるたびに、
「ギャーー!」と私の叫び声が響きます。
髪も服もボサボサ。
でも、そのドタバタが一番楽しくて、
家族の一体感も生まれる瞬間です。
準備も片付けも、全部ひっくるめて
「キャンプ」なんだなと思います。
川ではアマゴのつかみ取りにも挑戦。
怖がってなかなか手が出せなかった娘が、
やっとの思いで掴み取った一匹。
ぬるっとした感触に「うわー!」と
何度も叫びながらも、
自分の手で捕まえられたことに、
とても満足そう。
自然の中では、ほんの一瞬の勇気が
一生の記憶になります。
さっきのアマゴをさばいて、
晩ごはんの一品に。
最初は触るのも嫌で、
泣き言を言っていたけれど、
最後には慣れた手つきで
綺麗に下ごしらえを終えました。
炭火でじっくり焼いた、
ふわふわのアマゴ。
「いただきます」と一口かじると、
いつもと違う感覚に、少し驚いている様子。
「おいしい...」と、
静かな感動が伝わってきました。
命をいただくこと。
自然の恵みと向き合うこと。
知識じゃなく、体験として、
心に届いてくれたと感じました。
すっかりキャンプの沼に
ハマってしまった我が家。
行くたびに欲しいものが増えて、
帰りの車では次に買うギアの相談会。
新たな道具を買っては、
庭で試すという時間も、
楽しみのひとつです。
タープを張って、
お気に入りのチェアを出して。
自然を持ち帰るように、
日常のなかに小さなアウトドアを
つくっています。
自然は大切なことを教えてくれる。
便利なものがなくても、
何もかも自分たちの手でつくる時間の中に、
ちゃんと満たされる瞬間があります。
暮らしの中で、いろんなことを
忘れていたんだなと気づかされる。
風が吹いて、火が消えても、
また起こせばいい。
ただ、それだけのこと。
そろそろ、恒例の家庭菜園の準備をする季節。
自然に習って、自分たちの手で苗を植えて、
水をあげて、育てていく。
今年は何を育てようかと、
娘とあれこれ話すのも楽しみのひとつ。
昨年はミニトマトが豊作で、
朝摘みの一粒がなんとも格別でした。
今年の夏も、自然と一緒に、
またひとつ私たちは大きくなれる気がしている。