
世界中で愛され続けている不朽の名作「CH24(Yチェア)」。 巨匠「ハンス・J・ウェグナー」による、永く暮らしに寄り添うダイニングチェアです。
https://www.receno.com/diningchair/ch24.php【お知らせ】 お盆の営業と配送について
公開日 2025年08月08日(金)
更新日 2025年08月08日(金)
こんにちは、カメラマンの辻口です。
みなさまは「名作家具」というものを
ご存知でしょうか?
「名曲」や「名著」のように、インテリアにも
「人々から、特別に長く愛されるプロダクト」が
存在します。
最初に「名作家具」と聞いたときは、
「何だか気取っていて、嫌だなぁ」と感じたのが
正直な感想です。
しかし、名作家具を知るにつれて、
という魅力があることに気づかされ、
名作家具の世界がとても好きになりました。
今回は、
というような、自分が名作家具を知る前に
持っていた疑問を軸に、魅力を紐解いて
いきたいと思います。
名作家具が長く愛される理由の1つとして、
「価値が保証されている」ということが
挙げられます。
しかし、価値というのは受け取る人によって様々。
いくつかの角度から、名作家具が持つ
価値について考えてみたいと思います。
「名作インテリアの価値」を分かりやすくするために
まず「リセールバリュー」について
考えてみたいと思います。
「中古価格」とも言い換えられますね。
メルカリなどのフリマアプリが分かりやすいですが、
一度使用した家具やインテリアの値段は、恐らく
購入した際の半額以下になるのが普通だと思います。
しかし、例えば「stool 60」など名作と呼ばれる
家具は、二次流通でもほとんど価格が落ちず、
長く綺麗に使われたものは、むしろヴィンテージ品
として価格が上がることさえあります。
「名作か、そうでないか」で、リセールバリューに
大きな差が生まれるのは、名作家具が
持つ価値を端的に表しています。
ただ、ここで言いたいのは「資産としても
価値があるから名作を選ぶべき」ということではなく、
「優れた家具である証」として「名作」という
価値観が確かに存在しているということです。
名作と呼ばれる家具は、
といった3つの要素を備えたものがほとんどです。
「どの要素が欠けても名作家具が生まれることはない」
ということが、名作家具にまつわるストーリーを
紐解くと見えてきます。
そして、名作家具には、家具自体が持つ3つの
要素の他に、「4つ目の要素」があります。
それは「ユーザーに愛され、信頼されているかどうか」
ということです。
1つの家具が絶対的な信頼を得るには「歴史」
と呼べるような長い時間が必要ですが、名作家具には
そうしたストーリーが必ずあります。
たくさんのインテリアが生まれては消えていく中で、
3つの要素によって愛され、長い歴史を
生き抜き、たくさんの人から得られた信頼が
「名作」という称号、と言えるかもしれませんね。
「名作家具の、名作たる理由」に
ついて解説してきました。
もう少しお話を分かりやすくするために、
の代表的な「4つの名作家具」をピックアップし、
をさらにお届けしたいと思います。
1つ目は、ハンス・J・ウェグナーの
「Yチェア」です。
「ハンス・J・ウェグナー」は、生涯500脚以上の
椅子を手掛け「北欧家具の巨匠」と呼ばれた
デンマークで最も著名な家具デザイナーの一人です。
17歳で木工の職人試験に合格し、その後は
デンマーク王立芸術アカデミーで学んだことで
「技術」と「デザイン」に精通しています。
ウェグナーが手掛けた中で、最も広く流通している
プロダクトが「Yチェア」の愛称で
親しまれている「CH24」です。
Yチェアが誕生した1950年の戦後当時、アメリカや
欧州で「シンプルで手の届く価格の家具」の
需要が高まっていました。
機械による木工製造技術を早くから確立していた
メーカー「カール・ハンセン&サン」は、
需要に合う「量産できるチェア」のデザインを
当時まだ若かったウェグナーに依頼します。
ウェグナーもまた、MoMAの「ローコスト家具コンペ」
に参加するなど、家具を広く届けるために
「量産」について試行錯誤していた時期でした。
このメーカーとデザイナーの出会いが「Yチェア」
誕生のきっかけになったのです。
「機械生産」や「量産」と聞くと味気なく
感じますが、Yチェアはとても機械で量産された
椅子には見えないようなクラフト感があります。
象徴となっているY字の背板は、機械での
生産に最適化した形を追求した結果であり、
決して意匠としてのモチーフではないのだそう。
そして、座面のペーパーコードだけは、熟練の職人に
よって張られており、手仕事と機械作業が巧みに
組み合わさってYチェアは作られています。
僕も家で使っていますが、外で他の椅子に座ると、
何だかその時間が勿体なく感じるくらい、
Yチェアは座り心地にも優れた椅子、といえます。
そうした椅子としての確かな使い心地と、
生産が継続し続けられるようにデザインされたことで、
70年以上愛され続け、名作チェアの代表と
呼ばれるようになりました。
ちなみに、最初に「リセールバリュー」の話を
しましたが、Yチェアは手放したがる人がいないのか、
最も二次流通を見かけない椅子の1つでもあります。
世界中で愛され続けている不朽の名作「CH24(Yチェア)」。 巨匠「ハンス・J・ウェグナー」による、永く暮らしに寄り添うダイニングチェアです。
https://www.receno.com/diningchair/ch24.php
2つ目は、同じく北欧に出自を持つ「stool 60」です。
stool 60をデザインしたのは、
フィンランド旧紙幣の肖像にもなったほど
高名な建築家「アルヴァ・アアルト」。
アアルトは、200の建築を手掛けたと
いわれていますが、60のインテリアも手掛けており、
建築家を主軸としながら、
ファニチャーデザイナーとしても非常に有名です。
1933年、「L-leg」という革新的な
木工技術と共に生まれた「stool 60」は、
アアルトの代表作の1つです。
アアルトは、森林大国フィンランドの資源である
木々を活かす技術の研究を重ね、「強度を保ったまま
木材を曲げる技術」を生み出しました。
ウェグナーと同じく、アアルトは量産を前提にした
シンプルでコンパクトなデザインを、この「L-leg」
という技術の開発によって可能にしました。
stool 60は組み立てと分解が簡単な構造を持ち、
フラットな梱包に収まることで「物流」の
側面でも優れたプロダクトでした。
こうした「広く届けたい」という信念と
「それを実現する技術革新」というのは
名作家具によく見受けられる特徴です。
stool 60も我が家でも使っていますが、使い心地の
面で一番の特徴は「座面がフラット」だと
いうことでしょうか。
スツールというのは、座り心地に配慮して、
座面がクッション張りだったり、
すり鉢状になっているものが多いです。
その点、stool 60は板座になっていて、
起伏のない平らな座面を持っています。
座り心地はあまり良いとは言えませんが、時には
サイドテーブルやディスプレイ台として、
スツールという枠を超えて、家の中でマルチに
使えるのが大きな魅力です。
スタッキングした姿が美しいのは有名ですが、
いくつあっても邪魔にならず、お部屋の中で必ず
役割があるstool 60は「絶対に後悔しない名作家具」
と言えるかもしれません。
世界中で80年以上愛され続けている、「Altek STOOL60(アルテック スツール60)」。 北欧の建築家アルヴァ・アアルトが生み出した、シンプルで無駄のないフォルムが魅力です。
https://www.receno.com/stool2/stool60.php
1900年から1970年にかけては
北欧家具デザインの黄金期とされ、
ウェグナーやアアルトが活躍した時代であり、
「ボーエ・モーエンセン」もその1人でした。
最初に紹介したウェグナーとボーエ・モーエンセンは
共同生活をしていたこともある深い友人で、MoMAの
ローコスト家具のコンペに同時に参加するほど、
近い志を持っているデザイナーでした。
とりわけ、モーエンセンは一般住宅に向けた
手の届きやすく、機能的で、丈夫で、かつ美しい
家具の制作にこだわり、その姿は敬意をもって
「庶民のデザイナー」と呼ばれていました。
モーエンセンは1942年から「FDB」という
デンマークの生活組合に在籍し、8年にわたって
家具部門で設計の責任者を務めていました。
多くのデザイナーは家具ブランドや
工房との協働が中心ですが、こうした経歴は
モーエンセンの信念を端的に
表しているかもしれません。
モーエンセンがFDBでデザインしたチェアの1つに
「J39」があり、Folkestolen(フォルケストーレン)、
「庶民の椅子」という愛称で親しまれ、
彼の代表作の1つとなりました。
「J39」は、とてもミニマルなデザイン
でありながら、美しく、丈夫な椅子です。
撮影でも様々なコーディネートであわせることが
多いですが、シンプルな意匠なので、どんな
シチュエーションにも馴染みやすいのが特徴の1つ。
ヴィンテージ市場では良好な状態のJ39が多く
取引されており、その丈夫さを物語っていますが、
作りの良さを最も感じられるのは、
手に持ったときでしょうか。
精度の良くない椅子は、持ち上げたときに軋んだり、
わずかにたわみを感じて、椅子が個々のパーツの
組み合わせであることが、悪い意味で伝わってきます。
しかし、J39は持ち上げたときにそうした
違和感が一切なく、精巧に作られたパーツが完璧に
組み合わせられた丈夫さ、絶対的な安心感が
手から伝わってきます。
「簡素で、機能的で、質の良い家具」という
モーエンセンの哲学が、最も
表現された作品の1つです。
世界中で70年以上愛され続ける、北欧の名作「ダイニングチェアー J39」。名匠「ボーエ・モーエンセン」による、シンプルで洗練されたデザインが魅力です。
https://www.receno.com/diningchair/j39.php
ここまで北欧に出自を持つデザイナーや
プロダクトの紹介が続きましたが、もちろん日本にも
名作と呼ばれるインテリアは存在します。
その1つが、新居猛の「Nychair X」です。
新居さんは、1920年に剣道具製造の家庭に
生まれましたが、戦後の武道禁止令により
家業を継ぐことを諦め、木工を学びました。
北欧の家具デザインに影響を受けていた新居さんは、
やはり「手の届く良質な家具を作りたい」と、
名作を生み出してきたデザイナーたちと
同じ信念を持っていました。
1950年代、新居さんは映画や雑誌で見た
「ディレクターズチェア」にヒントを得て、そこから
「折りたたみ椅子」のデザインに情熱を注ぎます。
新居さんが折りたたみ椅子にこだわった理由は
2つあり、1つはその「コンパクトさ」です。
「折りたたんで片付ける」というのは、
日本のちゃぶ台文化からも着想を得ており、
当時の狭小な日本の住宅にもマッチしていました。
もう1つは「物流」です。
輸入家具などの、過剰で非効率な梱包に疑問を
持っていた新居さんは、折り畳めるチェアで
あれば、物流コストを抑え、価格に
還元できるだろうと考えました。
こうしたNychair Xのコンセプトを、新居さんは
「カレーライスのような椅子」と表現し、
国内から国外へわたって、徐々に愛好者を
増やしていきました。
しかし、2013年、新居さんの他界を境に、本来の
製造元である「ニーファニチュア」での製造が
難しくなり、Nychairは生産中止の危機に瀕しました。
しかし、Nychairの仕入れと販売を行ってきた
「株式会社 藤栄」が製造を引き継ぎ、Nychairの
生産は継続されることになります。
「良い椅子だと知っていたから」という言葉とともに
引き継がれたNychairは、使用者だけでなく、
企業からも愛され、その歴史を紡いできたのです。
我が家でもNychair Xを使っていますが、
Nychair Xは重心が低く、ゆったり座るための
「ラウンジチェア」です。
ステンレスのフレームに「帆布」という丈夫な布が
渡された構造で、腰掛けると帆布が体を
包み込むようにフィットします。
天然木で作られた肘掛けや、長く伸びた
ハイバックの背もたれが頭や腕を支えて、
眠ってしまいそうになるほど、力を抜いて
リラックスできるチェアです。
Nychairは「畳1畳分のくつろぎ」と表現されることが
あり、広げても畳1畳、折りたためば片付けやすく、
移動しやすいので、「折りたたみ椅子ってこんなに
便利なのか」と、驚きがあります。
涼しい季節には、ベランダにNychairを出して
読書するのがお気に入りの使い方です。
まるで包み込まれるような、至福の座り心地を味わえる「Nychair X(ニーチェア エックス)」。暮らしに馴染む、美しく機能的な日本の名作チェアです。
https://www.receno.com/loungechair2/nycrx.php
代表的な「4つの名作家具」のストーリーと
使用レビュー、いかがでしたでしょうか?
名作家具から学ぶことは多く、実際にお部屋へ
取り入れているスタッフも多いリセノ。
名作家具に倣い「Re:CENO product」の
モノづくりも「1つのコンセプト」と
「3つの指針」を掲げています。
少しだけ、ご紹介させてください。
Re:CENO productのコンセプトは、ひとことでいうと
「暮らしの負を取り除くこと」です。
暮らしの中では、はっきり意識している不便さ
だけでなく、自分でも気づいていない暮らしにくさ、
「暮らしの負」があります。
お客さまの暮らしを見つめ、その負をすくい上げて、
解決できるプロダクトを届ける。
それがRe:CENO productの目指す場所です。
例えば、リセノで最も人気のある「AGRAソファー」。
これは「ソファーがあるのに、ついつい床で
くつろいでしまう」という、暮らしでよくある
行動にヒントを得て、開発されたプロダクトです。
重心が低くて、広々とした場所で寝転んで
くつろぎたいと思っているけれど、床で
過ごすのは見た目にも、衛生的にも
なんだか憚られる。
そんな「潜在的な負」をすくい上げて
「床でくつろいでいるような、広々としたソファーがあれば」
というコンセプトで、AGRAは作られました。
他にも、北欧のヴィンテージキャビネットから
着想を得て制作された「siltaシリーズ」。
北欧のヴィンテージキャビネットに憧れを持つ人は
多いですが、ヴィンテージは高価であり、また
日本の狭小住宅には合わない大きさのものが
ほとんどです。
siltaでは、ヴィンテージへの憧れに応えるために、
色味を忠実に再現した「ヴィンテージレッドカラー」
の開発や、日本の住宅の通路幅にあわせて、収納量は
確保しながら、ちょうどよい奥行きの幅を追求しました。
このように、漫然と家具を作るのではなく、
時代や、環境や、人々が持つ不便に寄り添えるものを
生み出す、というのは名作家具から学んだ信念です。
Re:CENO productは
「インテリアの楽しさを、もっとたくさんの人に。」
というブランドミッションを叶えるために行っている、
重要な活動の1つです。
そして、Re:CENO productのコンセプトは、
3つの指針によって支えられています。
心地のいいデザイン。
わたしたちが求めるデザインは、
心地を備えた美しさです。
デザインとしてただ美しいだけでなく、生活の中で
ふとした瞬間に感じる気持ちよさや、利便性といった
「心地」を考えたデザインを追求していきます。
長く使える工夫。
わたしたちは、ずっと暮らしに
寄り添う家具を提案します。
暮らしの人数や広さといった生活スタイルが
変わっても、サイズ・清潔・トレンドの対応力を与え、
いつまでも使い続けたくなる家具を作ります。
適切な選択。
わたしたちは、上質さは求めますが、
高価な家具は求めません。
質の高い素材を適切に取り入れながらも、
信頼ある海外工場を採用することで
生産コストを下げ、配送やデザイン代といった
本体の質以外の経費を削減することで、
価値ある家具を、適切な価格で提供します。
名作家具が長く愛される理由、
いかがでしたでしょうか?
名作家具は、ただ1つの家具のことを指すだけでなく、
そこにまつわるストーリーや世界観、そして
わたしたちのように、インテリアの道を進む
人たちへ良い影響を与えてくれる価値観です。
もし、インテリアをもっと知りたい、楽しみたいと
感じている方がおられたら、ぜひ名作家具の世界に
足を踏み入れてみてください。
リセノスタッフが名作家具を愛用してしている
記事もたくさんありますので、
もしご興味あれば。
きっと、Yチェアがなかったら、僕とリセノの出会いはなかったと思います。
https://www.receno.com/pen/essay/u48/2023-05-01.phpこれからも長く長く可愛がっていきたいスツールに出会えました。
https://www.receno.com/pen/myfavorite/u57/2022-05-27.phpデザイン性と機能性を持ち合わせた「ロッキングチェア Nychair X」の魅力をご紹介します。
https://www.receno.com/pen/myfavorite/u27/2024-05-20.php
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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