
【くちぶえエッセイ】3つのつむじと、
8年の記憶
早いもので、あと数日で
娘が8歳になります。
ついこの前まで、
小さな手をぎゅっと
握りしめていた気がするのに。
予定日をかなり過ぎて、
やっとのことで生まれてきたあの日。
出産には48時間もかかり、
その間に、隣の分娩室では
3人もの産声が...。
娘の姿を見たときの喜びは、
今でも鮮明に覚えています。
ようやく出会えた娘を
腕の中に抱くこともなく、
娘はすぐに入院しました。
集中治療室でぽつんと
横たわる姿を見たとき、
胸がぎゅっと締め付けられました。
会えるのは面会時間の
短いひとときだけ。
寂しかったのは娘だけではなく、
私も同じでした。
あの時間があったからなのか、
今でも娘はひとりでいるのが
あまり得意ではありません。
すぐ「ママ!」と駆け寄ってくる
甘えん坊な姿は、
なんとも愛おしいものです。
そんな娘も2歳になる前から、
自分の部屋で寝る習慣がつきました。
最初は心配でしたが、
意外にもすんなり受け入れ、
今では寝付きの良さが自慢です。
早いときは2分で夢の世界へ。
とはいえ、ほんとうは一人で
寝るのが寂しいらしく、寝る前には必ず
「寝るまで横にいて」と甘えてきます。
そのたびに、お腹をトントンしながら
「おやすみ」と声をかけるのが、
私にとっても大切な時間です。
娘には、3つ、いや、それ以上?
おでこにたくさんつむじがあるという
珍しい特徴があります。
生まれたときから渦巻いていた
そのおでこを見て、
「この子はなかなかの頑固者だな」
と思いました。
そして、予感は的中。
自分の意見をしっかり持っていて、
すっかり言葉も達者です。
これからどんなふうに成長するのか、
楽しみでもあります。
そんな娘の将来の夢は、
昔から変わらず「ショコラティエ」。
大人になったら自分のお店を
開くのだと言います。
家でも「修行」と称して
キッチンに立つことが増えました。
ひとりで作れる料理も増え、
少しずつ自信をつけています。
自分の好きなことに
まっすぐ進む姿を見ていると、
つむじの話も「頑固」ではなく、
「意志の強さ」と思えてきます。
成長とともに、甘えん坊な一面と、
自立した一面が交互に顔を出します。
朝は「そばにいて」と言いながら、
昼間はお友達と夢中で元気に遊び、
夜には安心するまで
私のそばにくっついてくる。
どちらも娘らしくて微笑ましいです。
親としては、ずっと甘えてほしい気もするし、
早く手離れしてほしい気もする。
成長を見守るのは、嬉しくもあり、
少し切なくもあります。
8年という時間は長いようで、
あっという間でした。
この一年も、きっといろいろな
ことがあるでしょう。
新しいことに挑戦したり、
少しずつできることが増えたり。
その変化を一緒に楽しみながら、
毎日を大切に過ごしたいです。
私自身も成長できる
一年にしたいと思います。
娘との日々は、
かけがえのない宝物です。
新しい一年、またたくさんの
思い出を作りたい。
きっと、この先も娘の成長に
驚かされ、笑わされ、ときには
戸惑うこともあるでしょう。
でも、それ以上に喜びや感動の瞬間が
たくさん待っているはずです。
目の前の小さな幸せを大切にしながら、
一日一日を丁寧に積み重ねて
いきたいと思います。
今夜も、おでこに渦巻くつむじを撫でながら、
「おやすみ」と声をかけると、
娘は安心したように目を閉じました。