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【北欧 旅日記_Vol.2】「アルヴァ・アアルトの自邸」に行ってきました。

こんにちは。
バイヤーのなかむらです。

先日のアルヴァ・アアルトのアトリエのレポートに
続き、今回は「アアルトの自邸」についてご紹介します!

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この自邸は、アルヴァ・アアルトと妻:アイノが、
1936年に共同で設計したものです。

1929年、彼は30代という若さで「パイミオ
サナトリウム」のコンペで仕事を勝ち取り、
国際的な建築家として知られるようになります。

そして、業務拡大と仕事環境を考え、
首都ヘルシンキに拠点を移すことを決意します。

この自邸は、そんな彼の黎明期に建てられたもの。

ヘルシンキに進出して初めての建築だったため、
この街での名刺代わりなることを想定していたそうです。

妻 アイノ・アアルトって?

ここで先に、アルヴァ・アアルトに大きな影響を
与えた「アイノ・アアルト(Aino Aalto)」の
魅力をご紹介します。

彼女は、アルヴァ・アアルトの最初の妻であり、
建築家・デザイナーです。

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2人の出会いは、ヘルシンキ工科大学在学中。
その翌年の1924年、彼女が彼のオフィスで
働き始め、2人はすぐに恋に落ちます。

そして、わずか半年後に結婚し、2人の子供にも恵まれました。

そして、デザイナーとしても数々の作品を発表します。

iittalaの「アアルト グラス」

彼女の代表作は、日本でもお馴染みの「iittala」の「アアルト グラス」 。

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1936年、ミラノ・トリエンナーレ展にて金賞を
獲得した名作グラスです。

デザインされてから70年も経った今も生産が続け
られ、世界中で愛されているロングセラー。

彼女は、「アルヴァ・アアルトの妻」として
語られることが多いのですが、彼にコンペで勝った作品でもあります。

マイレア邸 と パイミオ サナトリウム

アルヴァ・アアルトの最高傑作と言われる「マイレア邸」。

アルヴァ・アアルトが国際的に高い評価を得た「パイミオ サナトリウム」。

彼の代表作と言われているこれらの建築は、
実は、2人が
共同で作ったもの。

もちろん、2人の自邸もです。

アルヴァ・アアルトは、自由な想像力と形にする
行動力を持ち合わせていましたが、正確性と忍耐力
がいる作業は、妻のアイノに任せていたそうです。

2人は、最良のパートナーだったんですね。

アルヴァ・アアルトの自邸

さて、話を戻しまして、アアルト夫妻の自邸をご案内しましょう。

この自邸がある場所は、ムンキニエミという
閑静な住宅街。
建てられた当初は、未開の地で、自然が多く残っていたそうです。

北欧らしい針葉樹林に囲まれた「庭」

まっすぐ伸びる針葉樹林に囲まれ、豊かな自然が
広がっています。
空気が澄んでいて、とても気持ちいい!

アアルトは、「植物は建築の一部」と考えていた
そうですが、自邸の庭を見ても、それが納得できます。

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ツタが、庭から家へと続き、繋がっているように見えます。

また、四季に応じて変化する葉が、外壁に彩りを添えていて、とても美しいです。

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アイノのもまた、ヘルシンキ工科大学在学中に、
造園家のもとで働きながら植物やランドスケープを
学んだ経験があり、庭のデザインに熱心だったとか。

彼女は、この庭に、フィンランドらしい松やりんご、
桜の木を選んだそうです。

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自然との繋がりが美しい「外観」

緑を大切に考えるアアルトの建築は、庭側に家の顔
がくるようにデザインされているそうです。

この自邸でも、白いレンガ壁に、わざと割り方が
繋ぎ目
が不揃いのダークブラウンの小割板を加え、
自然の風合いを出しながら、力強さも感じられます。

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そして、こちらが反対側。
確かに、簡素です。

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それでは、こちらの扉から中に入ってみましょう!

自邸に併設された「アトリエ」

受付を済ませ、少し進むとアトリエがありました。

ここは、アトリエが新設される1955年まで、
オフィスとして利用されていた場所。

吹き抜けになっていて、開放的です。

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一番奥の窓際にある白いデスクは、アアルトの席。

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採光のための窓は、高い位置に設けられています。
デスクと同じ高さにしなかったのは、緻密な設計を
するスタッフの集中力を高めるため。

天井照明は、わずか1つ。
デスクライトで、光を調整していたようです。

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アトリエの奥には、小さなアアルトの書斎もありました。

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美しい中庭が望める「リビング」

アトリエの隣には、家族が寛ぐリビングルームがあります。

リビングの床がアトリエより1段下がっているため、
少し特別な空間に入った印象を受けます。

ただ、アトリエとリビングの間仕切りは、木のスライド式のドアのみ。

彼は、スタッフを家族の一員と考え、仕事場と
住居スペースの敷居を低くしたかったそうです。

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大きな窓からは、溢れんばかりの光が差し込みます。
目の前が、緑豊かな庭の景色で埋め尽くされ、とても贅沢。

ソファーに腰掛けて外を見た時、外の人工的な物が
視界に入らないように、腰窓になっています。

また、室内のプランターの植物と庭が、連続した
一つの空間に見えるようにも考えられているそう。

これは、外部と内部の空間に、繋がりを持たせたからだそうです。

冬の寒さを考え、大きなガラス窓はFIXにし、
左側に木で出来た換気用の開口部が設けられています。

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ソファー、テーブル、チェア、照明など、
自邸に置かれている家具のほとんどは、もちろん
アアルトがデザインしたもの。

自分がデザインした作品を製作する会社
「アルテック(artek)」を自ら設立したのも、ちょうどこの時期。

現在も、同社で販売されている家具や照明が、たくさん並んでいます。

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アアルトの名作の一つ「アームチェア400」
(ARMCHAIR 400)は、アイノが好んだゼブラ柄
のファブリック仕様。
落ち着いた色が多い中で、アクセントになっています。

このソファーは、重量感のあるフォルムから
「タンク(戦車)チェア」とも呼ばれています。

曲げ木手法を用いた脚部のラインが、滑らかでとても美しいですね。

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こちらの黒のソファーは、唯一、アアルトのデザインではありません。

彼が初任給で買った無名のソファー。
長い間、大切に使っていたそうです。

また、その奥には、アイノが好きだったピアノが置かれています。

これはポール・ヘニングセン(Poul Henningsen)のデザイン。

ピアノの上には、アイノの写真が飾られています。

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妻アイノの思いが詰まった「ダイニング」

続いて、リビングの隣にあるダイニングルームへ。
木の温もりが感じられる、とても穏やかな空間です。

木彫のダイニングチェアは、アアルト夫妻が
新婚旅行で訪れたイタリアで買ったもの。

アイノがイタリア行きを望み、1ヶ月半の間、
イタリアを旅しました。

2人は、イタリアの建築や文化に強く影響を受け、
その後も、何度も訪れたそうです。

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昔、日本の台所にもあったような、どこか懐かしい食器棚。

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こちらは、アイノがデザインしたものです。
両側が引き戸になっているのが、便利ですね。

食器棚の中には、「アアルト グラス」と
「アアルト ベース」、そして「ワイヤーできた人形」が並んでいます。

ワイヤーの人形は、誰だかわかりますか?

答えは、アルヴァ・アアルトです ^^
友人が、彼をイメージして作ったそうです。

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家族のプラベート空間 2階

2階は、家族のプライベート空間です。

リビングルームを囲むように、夫婦の寝室、
子供部屋、ゲストルーム、バスルームが配置されています。

暖炉のあるリビングに家族が集まり、団欒されていたのでしょう。

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それでは、各部屋の写真をご紹介します。

リビングルーム

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夫婦の寝室

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子供部屋1

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子供部屋2

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ゲストルーム

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バスルーム

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屋上テラス

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アアルトの自邸は、暮らしの"大切なこと"が詰まった空間でした。

今回、アアルトの自邸を初めて訪れましたが、
何度か来たことがあるような、居心地の良さを感じました。

それは、彼が大切にしていた

・美しい自然との関わり
・環境に寄り添った快適空間の設計
・自然光の人口照明のバランス
・温もりのある家具製作 など

暮らしていく上で、誰もが心地いいと感じるものが
詰まった空間だったからのように思います。

改めて、自然と関わりながら、簡素に暮らすという、
''大切なこと''に気付かされました。

彼らは、その後の多くの作品で、自邸で試されて
いたことを、取り入れています。

それは、体現したものを、自信を持って示していたのではないでしょうか。

これからリセノでも、この''大切なこと''を忘れずに
物づくりをしていきたいと思います。

アルヴァ・アアルトの自邸 基本情報

名前The Aalto House
住所

Riihitie 20, 00330 Helsinki
riihitie (at) alvaraalto.fi
Map

トラム4・4T「Laajalahden aukio 駅」から徒歩5分
路線図

開館時間

5月 ~ 7月、9月(火〜日曜): 13:00〜 14:00〜 15:00~
8月(毎日): 13:00〜 14:00〜 15:00~ 16:00~ 17:00~
2月〜4月、10・11月(火〜日曜): 13:00〜 14:00〜 15:00~
12月・1月(土曜): 13:00〜 14:00〜 15:00~

入館料他

17 € (アアルト自邸ガイドツアーのセット30€)

言語:英語

ガイドツアーに参加することで、見学可能
ガイドツアー後、写真撮影・自由見学可能
個人で見学する場合は予約不要

URL

http://www.alvaraalto.fi/aaltohouse.htm

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