
公開日 2022年07月11日(月)
更新日 2022年12月27日(火)
【蚤の市で見つけた偏愛品】
琥珀色のトックリ
暑さを帯び始めた日差しが照る、
平安・蚤の市の一角。
日中の鋭利な光を受けて、
そいつはひときわ、琥珀色に輝いていた。
アンバーガラスは「古いもの」の常連顔だけど、
こいつは、何やら変わった趣き。
不思議なガラスのゆらめき。
それを手に取ると同時に、奥から
物腰柔らかな、おばあちゃん店主が滑り出てくる。
聞いてないけど、いろいろ教えてくれる。
言ってないけど、値引いてくれる。
蚤の市の流儀には、蚤の市の流儀で応えるほか無い。
「じゃあ、これください」
岡崎公園を後にしながら、
おばあちゃんの言葉を反芻する。
昭和、手作業、注ぎ口のヒビ、徳利。
なるほど、トックリ。
残念ながら、お酒はあまり嗜みません。
でも、あんまり綺麗だったもんで。
新しい命を吹き込むのが
「古いもの」の醍醐味だと、
誰かが言っていた気がする。
それは偏愛か、ただのエゴか。
思索の帰路を辿り、家につく。
日本酒の代わりに、水を注ぐ。
愛がなければ、花を添えたりはしない。
今日から君は、一輪挿しです。