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私と、artek stoolのある日の出来事

朝、目が覚めると鬱積したものを
吐き出すように、彼女は急に喋りだした。

『私は、色んな世界を見たい。
 ここに居ては何もないわ。はやく出かけよう。』

三本脚のスマートな彼女は、
いままで一度も喋った事がなかったので、
私はびっくりして、飛び起きてしまった。

彼女はいつものベッドサイドで、
静かに佇みながら、また口を開いた。

『私は、アイデンティティを求めている
 わけじゃない。
 でも、今動かなければ後悔をするわ。』

とは言っても、彼女は自分では動けない。
だから、私に訴えかけているようだ。

何をしたらいい?
私が聞くと、彼女はなぜか少し苛立ったように
ポツリと言った。

『それを考えるのが、あなたの仕事でしょう。』

そうなのかしら?と疑問に思いながらも、
とりあえず私の好きな場所に連れて行って
あげる事にした。

部屋の扉を出ると、彼女は嬉しそうに言った。

『これが、外なのね。』

20141111025600.jpg

私の直観で、北欧生まれの彼女は
自然の多い所が好きなんじゃないかと
考えていた。

私も、自然が好きだし、色もグリーンが好きだから
彼女を選んだ時も迷わずパイミオグリーンにした。

だから、自然の多い所へ
連れて行ってあげたいと思った。

駅まで歩く道すがら、私のお気に入りスポットに
寄って行く事にした。

まずは、【白川疎水】

20141111025748.jpg

小さな疎水だけど、夏には蛍も出て、
この季節には落ち葉も美しい場所だ。
彼女もきっと好きなはず。

彼女は、疎水に着くと、
水のあるところを何度も覗き込んでいた。

20141111035047.jpg

『興味深いわね。』

と、落ち葉と戯れながら
疎水沿いを行ったり来たり。

20141111025406.jpg

そろそろ行こうよ。と声をかけても、
なかなかその場から動こうとしない。

それにしても、彼女はどこに居ても
絵になる人(stool)だな...と感心していると、
急に我に返ったように、

『さぁ、早く次に行きましょう。』

と、急かすように言った。

さて、私の行きたい場所には、
電車に乗らないといけない。

どうしようか迷ったが、
ここはただの持ち物として、
同乗してもらう事にした。

プライドが高いであろう彼女。

人格(椅子格)を無視されたと、
機嫌を損ねてはいけないので、
慎重にそれを悟られないように
しなければいけない。

地下鉄の長い階段を降り、
どんどん外の景色が見えなくなっていく事に
不安なのか?
終始、そわそわとしている様子。

怖いの?と聞くと、彼女は返事をしなかった。

改札を抜け、無事何も悟られず?に
ホームに到着。

私が、ホームの椅子に座ろうと近づくと、

『三つ子がたくさん居るわ。
 なんだか奇妙ね。
 ずっとだんまりで、少し怖いわ。』

と、自分が喋っているのが
普通だと思っているのか、
自分が最も奇妙な存在だとは
思っていないようだった。

私は、何も言えずに、ただコクリとうなずいた。

20141111025954.jpg

やがて、電車がやってきて乗り込むと、
長く大きな座席に心なしかビビっているのか、
また静かになった。

彼女は、自分の弱みを見破られるのが
嫌なのだ。

私は、そんな姿を反対側の座席から
ニヤニヤと見守っていた。

20141111030058.jpg

目的の駅に到着。

地上に出るため、エスカレーターに乗ると、
またもや彼女は何も喋らないので、どうしたの?と
聞いてみると予想外の言葉が返ってきた。

『It's so cool!』

なんで、英語なのかも、
何がcoolなのかもわからないけど、
人格が変わってしまうほどに
興奮したようだった。

私も、椅子に話しかける変な奴だと思われないかと、
ある意味興奮していた。

着いたのは、京都・北山にある『府立植物園』

20141111030238.jpg

私が、彼女を連れていける一番身近な自然だ。
私が思っていたように、彼女は大喜びして、
自然の中へと駈け出して行ってしまった。

息を切らしながら、何かを探しているかのように
夢中になっていた。

だけど、何かの衝動に駆られて
必死になっている彼女が羨ましく、
また、一番美しく見えた。

20141111030407.jpg

もう暗くなってきたから、帰ろう。
そう言うと、駄々をこねるかと思ったら、
返ってきた言葉はそうでは無かった。

『ありがとう。ほんとにありがとう。』

それと、同時に雨が降り出して、
急いで家に帰った。

家に着いてから、色々と感想が聞きたくて、
何かと質問を投げかけてみたけれど、
あれから一言も発しなくなってしまった。

きっと満足して、
言葉が必要なくなったのかもしれない。
そう思うことにした。

私は、そっと彼女をいつもの定位置に戻した。

今日の思い出にと、
一枚拾っておいた落ち葉を、彼女に置いてみた。

温かい部屋で、いつもの日常に
アッという間に戻っていった。

20141111030635.jpg

また、彼女が喋りだすかもしれない。

季節の変わり目には、いつか、また
外へ連れて行ってあげようと思う。

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